美しい旋律で始まる美しいお話、ナレーションの言葉選びが秀逸な”耳で聞く小説”です。

世界が終るまできみと
CAST 立花慎之介×鈴村健一 そして奇跡の5歳児演技代永翼さん

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もうすぐ、母との別れが来る。不安に押しつぶされそうになりながら有理(鈴村さん)と父と弟と3人で過ごす日々は、高宮親子の登場で変化していった。14歳、不安定な年頃。それでも、自分の周りに光があふれているように感じてたのは、怜人(立花さん)がいてくれたから。まるでおとぎ話のような思い出。今でも高宮邸のことを思い出すとき真っ先に浮かぶのは、光の中に立つ王子様のこと。俺の、初恋。

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DABA押し月間、今回は立花慎之介さんの「セメ」作品をチェック。
立花さんかなりゥヶ属性の人で圧倒的に『×立花慎之介』作品が多い方ですけど、大丈夫、『立花慎之介×』の作品で珠玉の一品がございます。

「まずは、おとぎ話のような話をしようか」
『世界が終るまできみと』は、弦楽器の旋律とともにこんな風に始まるお話です。

この段階でわかること。

このお話絶対重い。(´□`。)
(ついでに言うとこのブログきっと長くなる・・・)

このワンフレーズだけで「あーつまり現在はかなり不幸街道突っ走ってて昔の楽しい思い出がより美化されちゃってるんじゃねこれって」って予感バリバリ。
主人公速水有理君(鈴村健一さん)が、5年前の中学2年生だったころのお話をし始めます。
つまり現在18もしくは19歳、ちなみにジャケットイラストは現在の主人公たちです。
ブックレットの裏表紙が14~5歳の彼らなんだけど、本当におとぎ話の登場人物のような可愛らしい二人が描かれてます。
ブックレットの話ついでにブクレの中身について。
最初のページにインデックスと原作者さんコメントがあって、んでもって隣のページになんと演出家コメントが載ってます。
このドラマの演出家は、某wikiでもよくコメント欄にお名前の出る有名なプロデューサー阿部信行さん。
BLドラマ界では有名な方ですけど、でもあくまで裏方さんだよ、その人がブックレットにコメントのせてるって、なんか並々ならぬ気合いみたいなものが伝わってくるんですけど~(((;°°)~

立花さんフィーチャーですが、この作品主人公は速水有理役の鈴村さんです。
主人公なのでナレーションとモノローグも一人で担当し、さらには主人公たち成長しますので、中学生有理と大学生有理の4役を一気に引き受けていらっしゃいます。
そして、ナレーション量が半端ないですマジ半端ないです
シリアスストーリーでのドラマCDって確かにどの作品も主人公のナレーション量多めですが、このお話のナレーションはほぼ朗読、っつか語り部、鈴村さん語り部!!
小説ってさ、「」の会話や()のモノローグなんかより、圧倒的に地の文が多いじゃない?
ドラマCDにする場合、地の部分を会話やモノローグに置き換えることって多いと思うんだけど、このお話では小説の感じそのまんま脚本にしたんじゃないかなってくらいナレーション部分が多いの。
特に物語前半は、完全に朗読。
CD2枚組で、物語が第一部と第二部に分かれてるんだけど、第一部が主人公が中学生のころのお話で、冒頭曰く「おとぎ話」の世界。
実際の時間軸にいるのではなく、主人公の思い出として語られるので、ほとんどがナレーションです。
そして、この部分のナレーションの言葉がとにかく美しい。
ブクレの鈴村さんのコメント「口語ではない文章を読むのは難しい」という文章が次から次へと紡ぎだされて、より一層おとぎ話感を醸し出してくれます。

そこに登場するのが本作の王子様、高宮怜人役の立花さん@マジ王子!
立花さんの声の一番やわらかい部分で発声してると思います、中二でも超ジェントルマン。
こんな中学生はいないって言うかいたらビビるわ、びっくりするくらいおとぎ話の中の人です。
有理のキラキラしていた思い出のほとんどが怜人と過ごした時間で占められているので、現実離れした雰囲気は見事にマッチしてました。
っつーか最初のトラックタイトル「光の中の王子様」だよ、いやぁぁぁん会ってみたい白い洋館に住んでる王子様(*≧m≦*)

王子様との初対面時は、有理と怜人のほかに、有理の弟学(代永さん)もいました。
この時の学の年齢設定なんと5歳!
普通なら女性声優さんが担当する年齢の子を、20代男性がやってます!!(゚ロ゚屮)屮
衝撃すぎて耳疑ったわ、小学生時代を演じてる方は少なからずいると思うけど、5歳、幼稚園だろ5歳って、違和感ないよ代永さん、あなたの声帯は異次元仕様ですか(((゚Д゚)))
まーびびったびびった、一瞬「代永翼」という同姓同名の女性声優さんかと思った。

キラキラの時代ですが、主人公二人はかなり不幸背負ってます。
有理はお母さんが余命いくばくもなくて、お父さんは介護に追われて仕事もままならない状態、一方怜人は両親の離婚で母親に引き取られるも義父との関係がうまくいかず父親のところに来たばかり。
げんなりしてしまう状況の中、見かねた高宮パパ(小西克幸さん)が速水パパ(千葉一伸さん)に救いの手を差し伸べます。
実際は高宮パパには下心があって、速水パパはそれを利用しているわけなんです。
物語が一貫して有理目線で進むので、パパたちのお話は有理が気付いたことと高宮パパの弟康広(大川透さん)から聞いたことしか語られませんが、パパたちは恋人同士ではなかったと思います。
高宮さんは好きだったと思いますけどね、速水さんは奥さんの方が大事でした。

同じ家で生活する有利と怜人は、いつしか惹かれあって恋人同士になります。
関係はキス止まり、エスカレーターで高校に行く怜人とは違い、高校受験を控えた有理は学業優先、ジェントルマン怜人は「受験が終わったらいろいろさせてくれる?」と王子様本領発揮。
でも、受験の前に有理のお母さんが天に召されて、夢のような生活は終わりを告げ、速水パパは息子二人をつれ逃げるように高宮邸を後にします。
有理と怜人は離れ離れ、「しばらくは遠距離恋愛だね」の状態、ちょっとだけさみしいけど、まだ思いはつながったまま。
その後速水パパ失踪、15歳と6歳の子供残してどこへ行ったんだお父さん( ゚д゚)しかも物語最後まで行方不明のまま、本当にどこに行った?
更に、高宮パパと怜人は交通事故、怜人は一命をとり遂げるもパパは帰らぬ人に。
主人公たち不幸上塗りです、おとぎ話の世界崩壊の予感。
怜人と連絡が取れなくなり、有理はおこずかいをはたいて怜人に会いに行きますが、怜人に無視されます。
おとぎ話はハッピーエンドにはならず、有理の初恋は終わることになりました。

CD1枚目最終トラックから、現在の時間軸になり、大学生になった有理は学と一緒にアパートで暮らし始めます。
3年間連絡の取れなかった怜人と偶然にも再会することになるんですが、怜人は有理に気づきません、まるで知らない人みたいに扱われます。
そんな予感はしてましたけど、3年前の事故で怜人は記憶喪失になってます、えぇ予感はしてました!
有理はもう一度恋に堕ちます、初恋が続いているんじゃなくて、二度目の恋。

第二部からの重要人物が、怜人のおじさんの康広さん。
おとぎ話の続きのような怜人とは対照的で現実世界の存在の人、有理はこの二人の間を行き来するので康弘さんが憎まれ役のような印象を受けますが、良くも悪くもこの人は現実の象徴なので、おとぎ話になりそうな話を康弘さんが現実に引き戻してくれてます。
過去の記憶を取り戻したい怜人は、有理と学のもとにちょくちょく遊びに来ます。
BLでの記憶喪失ネタの場合、両想いだったのを思い出してほしいけど男同士だってのがネックになる、って言う設定がほとんどだけど、有理と怜人の場合、思い出させたくない、という気持ちが先に出ます。
キラキラした思い出だけど辛い事の上にあった時間だったから、怜人のことを思う有理は怜人にとって一番いい方法を模索します。
結局、思い出した方が良いと思うようになって、積極的に怜人と会うようになります。
昔の話をしたり、高宮邸に行ったりするうちに、怜人は有理に抱いていた感情に気づきます。
手探りで気持ちを確かめる怜人が切ないです、今は紳士じゃないなんて言いながら、どこまでもジェントルマン。

全ての記憶を取り戻すことが怜人にはハッピーエンドで、有理とっては二度目の終わりでした。
怜人に別れを告げたとき、怜人はそれを受け入れるんですが、「最後に君を抱きたい」と言って、ここで二人は初めて結ばれます。
好きだった子との記憶をあいまいなままで終わらせたくないからと言うんですけど、この時の怜人の記憶は完璧に戻っています、でも有理にはそれを伝えてません。
まだ、夢の続きのような状態。
ずーっと完璧な王子様だった怜人は、最中有理の目を閉じさせたまま抱きます、夢の続きのままで抱くんです。
有理のナレーションしかないので本当のことはわからないですが、たぶん怜人は泣いてたと思う、それって現実の怜人なので、有理には見せたくないのね。
男の人が泣きながらするのって、ゥヶの人たちは別として「ベルサイユのばら」のアンドレ以外花杏聞いたことございません。
しかもベルばらは感動の涙ですが、怜人のはさよなら覚悟の悲しい涙。
切なくて切なくて切なくて、本当にこのまま世界が終ってしまえと思った。

二人だけだったらこのまま終わっていた恋ですが、二人の間には学がいたんですね。
怜人の失われた記憶を知るもう一人の人物だけど、これまた現実の象徴だった康広さんとは逆の立ち位置で、おとぎ話の中の学。
康広さんによって現実に戻された有理は、学に導かれておとぎ話の世界に戻ることができます。
学のまっすぐさが、有理を動かしてくれるのね。
「記憶が戻った怜人」と認識して怜人と話をして、キスをして、体を重ねて。
おとぎ話じゃなく、現実の恋。
めでたしめでたしじゃないハッピーエンドです、もう、世界は終わらなくても大丈夫。

終始優しい流れで、聞き終わった後もふんわりした余韻がいつまでも漂うような物語でした。
鈴村さんが読んでくれる小説で立花さんの王子様に恋をする、とってもいいですよ。

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